House_Uc
いわゆる狭小変形敷地に計画された住宅である。
約17坪の計画地は、北側道路に接する部分で6m最奥部では2.7mまで狭まり、奥行きは約12mである。敷地形状や法規により制約された中で、都市における戸建て住宅の有り様を考える必要があった。
外壁のコンクリートはその吸水性や表面の平滑度の違いを貧調合のアクリル塗料を吹き付ける事で黒色の班として顕在化した。東面のスチールサッシュは溶融亜鉛メッキし、これをリン酸漕へ漬け込み亜鉛層を強化しつつ黒変させた。サッシュのメッキ付着状態や付着量といったものの違いを班模様として浮かび上がらせる仕組みである。外壁も合わせ、様斑は全て偶然(自然)の為せる技であり、人の外見同様美しく輝ける場所も有れば、あばたも有ろう。
変形の酷い敷地は東壁面という拠り所を必要とした。間仕切りや設備の配置等、全ての配置は東壁面の始点から座標で表される。例えば、採光も例外ではない。東壁面にランダムに配置された二十数個の窓からは真鍮の素地でつくられた金色の網戸を通して不均一に採光が為される。基準壁とも云える東壁面からもたらされるこの不均一性は、そこに住む人の記憶に留まり次第に空間に対し自己の定位を確立させ、日常のアクションへのきっかけとなる。行動の自動性が促進される結果として、居住者にとって空間の快適さを高めるのではないかと考えている。一方北面の大窓は安定した採光と外部への眺望をもたらす為にあり、それ以上ではない。
内部は1階に独立性の高い寝室と浴室。やや天井の高い2階の主室と、これに吹抜けとパンチングを使った階段で繋がる開放的な主寝室およびTearoomを3階に配置した。間仕切りには透明ガラスと和紙のブラインドを用い、気配を仕切らないよう注意した。経木スダレによって区画された3階のTearoomは唯一南面へ開いた空間である。眺望の先には一世紀の昔からのランドマークである給水所の配水塔が正面に見え、時間の連続性を感じられることだろう。