あちこちでお茶できる家-土間の記憶
敷地は大阪の郊外。なだらかな斜面を造成した静かな住宅街にある。
南側の道路から1段上がっており、日当たりは良好。200㎡ほどの区画が整然と並び、住宅を建てる上で申し分のない条件と言える。
正確に言えば、敷地は真南の軸線から23度振れている。真南方向で毎年大規模な花火大会が開かれることもあり、まずはここに注目した。
建物の長辺は真南に正対するよう配置し、玄関のある短辺部は敷地に直交する平面計画とした。これは街並みに配慮する意味と、西日を遮り、庭のプライバシーを確保する狙いもある。
直角より23度開いたヘの字プランは、1階では特に効果的だ。キッチンから全ての空間が見渡すことが出来るのだ。反対に、玄関土間に入った瞬間は奥まで見通せないという利点もある。
メインコンセプトは奥さんの「家の中のあちこちで、カフェのようにお茶できたら素敵」という会話からとったものだ。
キッチンで対面して、大きなダイニングテーブルで、居間横のカウンターでインターネットをしながら、庭で、2階ファミリースペースで、そして大きな玄関土間で。
ご主人は代々農家の家系。奥さんは太平洋に面する宇和海の漁師の家に育った。共通するのは、共に大きな土間があったこと。玄関土間はコンセプトを象徴するものだが、必然性があったのだと感じる。
その上部は、大きなバルコニーになっており、夏の花火大会を楽しめる。部屋ごとにテーマを決め、思い切った色を使った。更にカラフルな家具。楽しみの多い家だと思う。
外観は、山並みのように見る位置によって姿が変わるようなものイメージし考えた。よって全ての柱の高さが異なっている。